BA☆KU☆HA☆TSU
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< 祭 の 予 感 ! >
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フィルムはトライ X で万全。撮影はノーファインダー。
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遠く、花火の音は続いている。
時間とともに押し寄せる人波に取り込まれぬよう、早々その場を後にした。流れに遡って歩きながら度々横を振り向いて、花火の散るを眺めたが、私を引き留めるものではなかった。
混雑を抜けた後も、やはり私は流れに反していた。売店の前で駄々イズム、泣叫ぶ子供、ヒステリーに落ちた親。電話を片手に、目に付く看板などを読み上げてはキョロキョロ周りを見渡す学生風。貼付けたような不思議な笑みを浮かべて歩いてくる南亜人連れ。増便されたか、ひっきりなしにやって来ては行く路面電車は、浴衣や他所行きで着飾った色とりどりを満載し、或いはその中にいくらかの割合を占める普段着、日常通りの帰宅風都市生活者と好対照を見せていた。
私はそうした人々とすれ違いながら、いつもの帰宅経路を、いつもとは少し違った空気を感じながら歩いた。灯りの落ちたビルの窓に、明るんだ夜空が映っては消えた。
しかし駅も近くなると、そうした空気は薄れていった。地下道を抜けて繁華街の反対に出ると、普段通りの夜と変わるところはなかった。
客待ちのタクシーが並ぶばかりで人も疎らなロータリーに、信号機だけが賑やかに明滅している。毒々しいほど明るい赤信号も、帰りを急ぐ人々には見向きもされない。
私は帰路の残り半分を国道に添って歩く。駅の地下で最後の一枚を消費したフィルムを巻き戻しながら。
国道脇の平らな駐車場の前に、自転車を二台停めて、母子がフェンスに寄り掛かっている。その少し先でも、ベビーカーを押して歩いてきた家族が足を止めている。
駐車場の開けた視界の先に、あまり背の高くない岡山市街のビルが薄暗く夜空に浮かび、さらにその向こうに、いくつもの打ち上げ花火が小さく、しかし鮮やかに咲いている。視覚を幻惑するように、その音が遅れて届く。
私はその様子を眺めながら、立ち止まることなく駐車場の前を過ぎた。フィルムが残っていればな、と思った。
Aug. 2, Sat., 2008
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