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土山サービスエリア
土山? 何県なんだ? どれくらい走ったんだ? 二十四時間も経っていないどころか、ほんの数時間前に横浜の街で P 子さんと向かい合ってコーヒーを喫んでいたのが幻のようだった。
サービスエリアのコンビニでサンドウィッチを買って食べた。高速道路というある種の隔離された空間で、深夜に、通り過ぎるばかりで戻ってこない人々を相手に働くということを考えて気が遠くなった。
こういう莫迦なことを考えたのは疲れていたからに違いない。
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岡山に向かっていることすら定かではない
閉め切ったカーテンの隙間から光が漏れて車内に点々と模様を描く。その光点が順次前から後ろへ移動することで、バスが前に進んでいることが判る。他は何も判らない。私の知らない街がたくさんあって、一目見ることも叶わず私は運ばれていく。
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車内に漏れる光点が、道路照明の橙色から眩しい白色に変わっていた。窓のカーテンもその紅色を透けさせていた。夜が明けていたのだ。
契約通りならば、朝に岡山に着くことになっていた。ここは岡山かも知れなかった。
岡山
バスから降りると、岡山だった。遠いところまで来てしまった。
三年前、平成十八年の二月二十八日も、ほぼ同じ道順を辿った。奇しくも? 否。
なぜならこれは、巡礼だからだ。
空白都市 | June Rain オワリ
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