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システムや様式や組織を相手に、何枚の幕をめくれば人間に相手をしてもらえるのか。その日の集団面接は学生時代の就職活動を思い起こさせた。人間に飢えた私は同じ面接を受けた他の二人を呼び止めて喫茶に誘った。初対面の三人でおつかれさまでしたと、求職の情報を交換し、無駄話をした。もう名前も顔も忘れた。
久しぶりの東京の街だったが、心持ちは空模様と同様に冴えなかった。夜行バスでとんぼ返りをする前に会う約束をしていた P子の勤めが終わるまで時間をつぶさなければならなかった。私は鞄からチャイカを取り出し、渋谷向かいの半蔵門線を表参道でなんとなく降りた。
二月のとても寒い日だった。
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伊豆は暗い曇天だった。僕は水着を持っていなかったが、たいぞーくんが貸して呉れた。クスリでぼんやりとしていた僕の足元をうつぼが泳いですり抜けて行った。カシオのデジカメを手にいろいろ撮ったが深みを泳いで対岸へ渡ることになったのでカメラはあんめんくんに預けた。泳いで戻ってくると、びしょ濡れの僕の姿やこれが写っていた。
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大手町の駅まで歩き、床屋が開くまで PRONT で時間をつぶした。大手町のサラリーマンたちに混じってモーニングセットをつついた。彼らは時間を無駄にしない。7時台から街に現れてコーヒーを啜りながら、英会話の音響教材、経営学のテキスト、リーダーシップマニュアル、プレゼン資料、イエローのマーカー…… 私も背広を着ていた。しかし髭はちくちくと伸び、ネクタイは緩んでいた。職務経歴書(職務経歴なんてなかった)などを読み返した。息が詰まった。もし選考に通ったら、自分も同じになるのだろうか。
9時台までねばり、床屋で髭を剃ってもらった。鏡も借りて髪を整髪した。いい歳をして背広姿が板につかず、情けない気分になった。落ち着かなかったのでさっさと目的地に向かうことにした。久しぶりの地下鉄の匂いが、たまらなく憂鬱だった。
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巨大なビル群が私を圧倒した。それは見慣れたはずの風景だった。
数年の歳月がもたらした感覚のギャップに圧倒されたのだ。
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バスは朝の六時に東京駅に着いた。私は丸の内に放り出された。
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blue, blue age
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blue, blue age
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blue, blue age
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アマチュア
クシシュトフ・キェシロフスキ 監督 | 映画 1979年
Mar. 1. Tue. 2011 鑑賞
すばらしいことだ
死んだ人が、生きてここにいる
すばらしい
工場賃二ヶ月分をはたいて 8mmの映像カメラを手に入れた動機は、生まれたばかりの娘の成長を記録することだった。
ドキュメンタリ畑出身の監督が淡々と綴る、ドキュメンタリを撮る凡夫の物語。
写真も映像も近年ではとても身近なものになったと思うが、初めて撮影し、後刻再生をしたときの、思い出を箱庭に捕まえたような甘い感覚は誰にでもあったと思う。そうした純粋な感動から徐々に映像制作にのめり込んで行った主人公だったが、娘を抱えた妻の心は次第に離れてしまう。出て行く妻の後ろ姿を咄嗟に指枠でフレーミングする彼は、ファインダー越しにしか世界を見られなくなったのかも知れない。
独自の美意識や社会の真実を追い求めた結果、彼の周りで問題が引き起こされる。映画作りに当初から一定の検閲圧力をかけてきた工場長が主人公を諭す言葉は重かった。「あれを見ろ。何もない町だが、美しい景色だろ?(うろ憶え)」
分野こそ違うけれども創る人間として考えさせられる映画だった。
キェシロフスキ監督の映画鑑賞は三本目ですが、今のところはずれなしです。まあ、もしかすると当時のポーランドが持つヨーロッパの香り漂う共産圏の雰囲気(?)が好きなだけなのかも知れないけれども、ドキュメンタリ出身の監督の撮る冷徹で淡々とした映像や物語が非常に私のツボにはまっているようです。韓流イケメンドラマの棚が徐々に他を浸食しているわが町の TSUTAYA で、全く存じ上げなかったこの監督の映画と目が合った幸運に感謝。
あと、この映画の見所は、ヤシカちゃんです。たまたま名前を紹介するくだりがあるだけで本来は名なしの端役だと思われるのですが、このヤシカちゃんが仕草も歩き方もなにもかもかわいい。ショートカットにタートルネックのこざっぱりとした格好で歩くと揺れるのに収まりもいい。ヤシカちゃんに3000点あげてもいい。
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キミいま、おれと目が合ったでしょ。何処へ行くの? 教えてよ。
おれは何処へも、行けないんだよ。
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